【映画評】 Chef シェフ 三ツ星フードトラック始めました

試写日 2014.12.11.
配給元 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
                 エッセイスト&料理研究家 安井レイコ

 試写のお話しをいただいたとき、
「お、さすがに映画研究班で中・高校時代を過ごし、年間300本の映画を見て、今では海外ドラマが趣味の私をご指名なのね!」
と一瞬ときめいたけれど、そんなことはソニー・ピクチャーズさんがご存じなわけもないので、料理の映画だからなのかな、と想像しながら試写室へ。

 席に座ると、間もなく上映。そして3分後には、ちゃんと食べて出かけたはずのお腹は、別腹モードにスイッチオン!見事なシェフの味の壺の中に、この身を投げ込んでしまう羽目となった。

 ストーリーは、ロサンゼルスの有名シェフだったカールが、ちょっとした行き違いとしがらみと、中年男性にありがちなソーシャルメディアの落とし穴によって、全く違った人生を歩んでしまうというもの。
 このツイッターの使い方が、非常におもしろい。10歳の息子が絡んでくるのだけど、彼とお父さんとの年齢のギャップ、他の人たちとの会話で浮き出てくるアメリカのソーシャルメディア事情が、狭い国土の中で、一部の人だけがやっている感じのある日本とは違った、アメリカという国の大きさを感じさせる。

 そして俳優陣が個性的。監督と主演を務めるジョン・ファヴローの温かさと、見るからに「おいしいものが好きそう」という体型(失礼!)。この映画をやりたくて、一人ずつ口説いたという情熱が、ひとつひとつのシーンに溢れる。うん、まさに、思いが溢れている。
モデルさんだったというソフィア・ベルガラは、後ろ姿が美しい。あ、前もきれいだけど、後ろ姿…特にヒップのラインは、女性から見てもため息が出る。

 シェフの右腕で、独立してからも支えになる【良い人】役のジョン・レグイザモ。良い人のはずなのに、なんで危なっかしく感じるのかな?と考えていたら、医療ドラマ「ER 緊急救命室」でドラッグをやって首になったDr.クレメンテ役の俳優さんだった。長いシリーズの中でたった12話しか出ていなかったのに、強烈な印象を残した彼らしい荒さに、人間味が加わったすばらしい役どころだった。

 あと、何気ない役なのにさすがの存在感だったのが、ロバート・ダウニーJr.とダスティン・ホフマン。「当たり前!」と言われそうだけれど、これが、半端ない面白さのロバート。いやぁぁ、こう来たか—!いい、いい、いいねぇ。老練の演技を見せるダスティン・ホフマンは、主人公を窮地に陥れる役どころながら、「どうして憎めないのかなー」と見ているこちらが悩んでしまうほど深い。うう、あんたのせいなのに。。。
 そうそう、アイアンマンつながりで言えば、スカーレット・ヨハンソン。はぁ、美しい。彼女の登場シーンを見ていると、「美し過ぎるのも、美味し過ぎるのも罪」のような気がする。このシーンが官能的過ぎて、食欲がムラムラムラっと湧いてしまった人は、私だけではないはず!

 ああ食欲といえば、この映画は、お腹が空いた状態で見るのは、大変危険。おいしそうな音だけでなく、香りまで伝わりそうな圧倒的なシズル感。サクサク、とろり、カリリッという食べ物の奏でる音が、頭の中で弾ける。キューバ料理が、今すぐ食べたいっ!めちゃくちゃ料理を作りたい!

 おいしいものは、現地で味わう。本物の味を子どもに伝えるカールお父さん。これが食育の原点だよなぁと、泣きそうになる。ここまで語って来て今更だけど、とにかく、元気と食欲の出る映画、それが「Chef シェフ 三ツ星フードトラック始めました」なのである。
 
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写真は、この映画のオマージュでその夜作ったごはん。
本当はにんにくたっぷりのペペロンチーノにしたかったけど、次の日に仕事があるので、トマトソースで我慢。

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